・胃腸の不調とは

・胃腸の不調の原因・メカニズム

・胃腸の不調を治していくには

・胃腸の不調に似ている症状

・胃腸の不調をほっておいたら

胃腸の不調とは、消化機能が正常に働かない状態のことで、胃痛・膨満感・便秘・下痢・食欲不振などの症状を伴います。単なる食べすぎやストレスによるものから、胃炎・過敏性腸症候群（IBS）・胃潰瘍・消化不良・腸内環境の乱れなど、さまざまな原因が考えられます。

胃腸の働きは自律神経と深く関係しており、ストレス・睡眠不足・不規則な食事などが胃腸の不調を引き起こすこともあります。特に、胃腸が弱い人は、体全体の免疫力が低下しやすいため、早めのケアが重要です。

主な原因

1. ストレスや自律神経の乱れ
   • 交感神経が過剰に働くと、消化管の動きが抑制される。
2. 食生活の乱れ
   • 暴飲暴食、脂っこい食事、アルコール、刺激物が胃腸を刺激する。
3. 腸内環境の悪化
   • 善玉菌が減り、悪玉菌が増えると、ガスが溜まりやすくなる。
4. 血流の低下
   • 冷えや運動不足で胃腸の血流が悪化し、消化機能が低下する。
5. 胃酸の分泌異常
   • 胃酸が過剰に分泌されると胃痛や胃もたれの原因になる。

胃腸の不調には、神経・血管・消化器の相互作用が関与しています。

① 自律神経と胃腸の関係

• 胃腸は副交感神経（迷走神経）によって支配されており、リラックスすると活発に働く。
• 逆に、ストレスがかかると交感神経が優位になり、消化活動が低下する。
   

② 胃酸の分泌と消化機能

• 胃では壁細胞（parietal cell）が胃酸を分泌し、食べ物を消化する。
• 胃酸の分泌が多すぎると胃炎や胃潰瘍のリスクが高まり、逆に少なすぎると消化不良や食欲不振が起こる。
   

③ 腸内環境と免疫の関係

• 腸には免疫細胞の約70%が集まっているため、腸内環境が悪化すると免疫力が低下しやすい。
• 腸の蠕動運動（ぜんどううんどう）が低下すると、便秘やガス溜まりが起こる。

1. 食生活の改善

• 消化に良い食事を心がける（発酵食品、食物繊維を摂取）。
• 暴飲暴食を避け、胃に負担をかけない食べ方をする。
• 水分補給を適度に行い、腸内環境を整える。

2. ストレッチと運動療法

• 腹式呼吸：迷走神経を刺激し、胃腸の働きを活発にする。
• 軽いウォーキング：腸の蠕動運動を促進し、便秘を予防する。
• お腹のマッサージ：腸の動きを整え、ガス溜まりを解消する。

3. 鍼灸治療

鍼灸は、胃腸の血流を改善し、自律神経のバランスを整える効果があります。

治療する経穴（ツボ）

• 中脘（ちゅうかん）：胃の機能を高め、胃もたれを改善。
• 足三里（あしさんり）：胃腸の血流を促進し、消化機能を整える。
• 関元（かんげん）：腸の働きを活発にし、便秘を改善。

治療のメカニズム

• 鍼刺激による迷走神経の活性化 → 消化管の蠕動運動を促進し、胃腸の働きを改善。
• 血流の促進 → 腸内のガス排出を助け、便秘を解消。

4. 病院での治療

• 胃薬（PPI）：胃酸を抑えて胃の粘膜を保護する。
• 整腸剤：腸内細菌のバランスを整える。
• 漢方薬（六君子湯など）：消化機能を高める。

5. 胃腸の手術が必要な場合

• 胃潰瘍が重症化し、出血を伴う場合は手術が検討される。
• 腸閉塞や腫瘍がある場合は、外科的な処置が必要になることもある。

1. 過敏性腸症候群（IBS）

• 主な症状：ストレスで下痢や便秘を繰り返す。
• 胃腸の不調との違い：精神的な影響が大きく、自律神経の乱れが主な原因。

2. 逆流性食道炎

• 主な症状：食後や横になると胸やけが起こる。
• 胃腸の不調との違い：胃酸の逆流が主な原因で、胸の痛みや喉の違和感を伴う。

3. 機能性ディスペプシア

• 主な症状：胃もたれ、膨満感、食欲不振。
• 胃腸の不調との違い：胃に異常はないが、消化機能の低下が原因。

初期（炎症期：発症～1カ月）

症状

• 胃が重く、食後に胃もたれを感じる。
• 便秘が続き、お腹が張る。
• 体が冷えやすく、疲れやすい。
• ストレスが多く、寝つきが悪い。

鍼灸の施術内容

① 自律神経の調整

狙い：胃腸の動きは副交感神経が支配しているため、ストレスで交感神経が優位になると、消化機能が低下する。このバランスを整える。

• 百会（ひゃくえ）（頭頂部）：精神的な緊張を緩和し、自律神経を整える。
• 神門（しんもん）（手首）：ストレスを和らげ、リラックスを促進。
• 足三里（あしさんり）（膝下）：胃腸の血流を改善し、消化機能を高める。

② 胃の血流を改善

狙い：胃の働きを活発にするため、血流を改善し、胃酸の分泌を正常化する。

• 中脘（ちゅうかん）（みぞおち）：胃の蠕動運動を活発にし、消化機能を促す。
• 関元（かんげん）（へそ下）：腸の働きを活発にし、便秘を改善。

③ 温灸（お灸）を併用

狙い：胃腸の血流を改善し、冷えを取り除く。

• 三陰交（さんいんこう）（内くるぶし上）：冷えによる胃腸機能低下を改善。

治療後の経過

• 1回目の施術後、胃の軽さを感じるが、便秘は続く。
• 3回目の施術後、便が少しずつ出やすくなり、胃の重さも軽減。
• 週1回の治療を継続し、徐々に胃腸の調子が整い始める。

回復期（機能改善期：1～3カ月）

症状

• 食後の胃もたれが減ってきたが、たまに重さを感じる。
• 便秘は改善傾向にあるが、腸の動きが不安定。
• ストレスが軽減し、睡眠の質が向上。