・不眠症とは

・不眠症の原因・メカニズム

・不眠症を治していくには

・不眠症に似ている症状

不眠症は、眠りにつきにくい、途中で目が覚めてしまう、眠りが浅い、朝早く目覚めてしまうなど、十分な睡眠が取れず日中の生活にも支障がおきます。
睡眠障害の一種であり、短期間で改善する場合もあれば、慢性的に続く場合もあります。

1. ストレス
   精神的な緊張が交感神経を活性化させ、リラックスできない状態を引き起こします。

2. 生活習慣の乱れ
   夜更かしや不規則な就寝時間が体内時計（概日リズム）を乱します。

3. 身体の不調
   痛みやかゆみ、慢性的な疾患（関節リウマチ、心疾患など）が睡眠を妨げます。

4. 環境要因
   騒音、光、温度などの外的要因が安眠を妨げます。

5. 薬物やカフェインの影響
   カフェインやアルコール、薬物の摂取が睡眠の質を低下させます。

不眠症は、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで起こります。

通常、睡眠時には副交感神経が優位になりますが、不眠症では以下のメカニズムが関与します

• 交感神経の過活動
  ストレスや過剰な刺激により交感神経が優位となり、筋肉の緊張や心拍数の上昇を引き起こします。
  
  交感神経の過活動が起こると体に起きる反応

交感神経は「戦う・逃げる」反応を司る自律神経の一部であり、過活動が続くと以下のような身体的反応が見られます。

・血管収縮

影響: 末梢血流が減少し、手足が冷えやすくなる。長期間続くと、肌への栄養供給が低下し、乾燥や肌荒れが悪化します。

・皮脂分泌の増加

影響: 背中や顔にニキビができやすくなる。特に皮脂腺が多い部位で炎症が起こりやすい。

・腸の働きの低下

影響: 腸の蠕動運動が抑制されるため、便秘や消化不良を引き起こす。

・免疫機能の低下

影響: 風邪や感染症にかかりやすくなる。傷の治癒が遅れる。

・筋肉の緊張

影響: 肩こりや頭痛を引き起こし、慢性的な痛みにつながる。

・汗腺の活性化

影響: 手汗や足汗が増え、冷え感や不快感を伴う。

・ホルモンバランスの乱れ

影響: 女性では生理不順や更年期症状の悪化、男性では精力低下が見られる。

脳内のホルモン不均衡

メラトニン（睡眠ホルモン）の分泌低下、コルチゾール（ストレスホルモン）の過剰分泌が見られます。

​主要なホルモンとその作用

• メラトニン（松果体から分泌）
  不均衡の影響: ストレスやブルーライトにより分泌が抑制されると、睡眠開始が遅れたり、質が低下します。
  役割: 睡眠リズムを調整するホルモン。夜間に分泌が増え、眠気を誘発します。
• コルチゾール（副腎皮質から分泌）
  不均衡の影響: 慢性的なストレスで過剰分泌が続くと、睡眠中の覚醒や不安感を引き起こします。
  役割: ストレスに対処するためのホルモンで、朝に多く分泌され、活動をサポートします。
• セロトニン（脳内で分泌）
  不均衡の影響: セロトニンが不足すると気分が不安定になり、不眠やうつ症状を引き起こします。
  役割: 幸福感をもたらし、メラトニンの前駆物質としても機能します。
• ドーパミン（脳内で分泌）
  役割: やる気や快感を司るホルモン。
  不均衡の影響: 過剰になると興奮状態を引き起こし、リラックスできなくなります。
• ノルアドレナリン（交感神経から分泌）
  役割: 緊急時の身体反応を調整するホルモン。心拍数や血圧を上げる。
  不均衡の影響: 持続的なストレスで過剰分泌されると、交感神経が常に優位になり、疲労感やイライラが続きます。

• 筋肉の緊張
  特に肩甲骨周辺の僧帽筋、首の胸鎖乳突筋、腰部の脊柱起立筋の緊張が持続し、リラックス状態に移行できません。

不眠症を治していくには

1. 生活習慣の改善

• 就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控える。ブルーライトがメラトニンの分泌を抑制します。
• 規則的な就寝時間と起床時間を守り、体内時計を整えます。
   

2. 運動の活用

• 軽い有酸素運動（ウォーキングやヨガ）により、筋肉の緊張が解消し、副交感神経が活性化されます。
• 就寝前のストレッチで、僧帽筋や脊柱起立筋の緊張をほぐすことが効果的です。
   

3. 鍼灸治療の活用

鍼灸は、不眠症の根本原因である自律神経の乱れを整え、リラクゼーションを促します。

• 百会（頭頂部）
  副交感神経を活性化し、リラックス状態を誘導します。
• 神門（手首内側）
  ストレス緩和とリラックスを促進します。
• 足三里（膝下）
  血流を促進し、全身の筋肉をリラックスさせます。

鍼刺激により、脳内のセロトニンやエンドルフィンが分泌され、深い睡眠が得られるようになります。

1. 経穴（ツボ）への刺激が自律神経を調整

鍼灸は特定の経穴を刺激することで、交感神経と副交感神経のバランスを整えます。

• 百会（頭頂部）: 中枢神経をリラックスさせ、副交感神経を活性化。
• 足三里（膝下）: 末梢血流を改善し、全身の緊張を解消。
• 神門（手首内側）: 不安や緊張を軽減し、心拍数を安定させる。

2. 血流改善による神経伝達の正常化

鍼刺激が血管を拡張し、酸素や栄養素を十分に供給することで、神経伝達物質の分泌が整います。
 

3. 内因性オピオイドの分泌促進

鍼灸によってエンドルフィンやセロトニンが分泌され、リラクゼーション効果を高めるとともに、不安感や痛みを軽減します。

4. 迷走神経の活性化

鍼灸は迷走神経を刺激することで、副交感神経を活性化し、心拍数や消化機能の回復を促します。

自律神経が整ったと判断する基準

1. 身体的な変化

   • 手足の冷えが改善し、末端まで温かさを感じる。
   • 皮膚の状態が良くなり、ニキビや乾燥が軽減される。

2. 精神的な変化

   • 日中の集中力が増し、不安やイライラが減少。
   • 夜に自然と眠くなり、熟睡感を得られる。

3. 消化機能の回復

   • 食欲が安定し、便秘や下痢が改善される。

4. 心拍数の安定

   • 脈拍が安定し、動悸や息切れが軽減される。

5. 全身のリラックス感

   • 筋肉の緊張がほぐれ、肩こりや頭痛が軽減される。

1. 睡眠時無呼吸症候群
   睡眠中に呼吸が一時的に止まることで睡眠が中断される障害。

2. 周期性四肢運動障害
   睡眠中に足や腕が不随意に動くことで眠りが妨げられます。

3. ナルコレプシー
   日中の強い眠気や突然の睡眠発作を特徴とする障害。

4. うつ病
   精神的な不調により眠りが浅くなる、あるいは早朝覚醒が起こります。